遺体を「綺麗にする(清める)」という点で同じ
湯灌は日本書紀にも載っている歴史の古い儀式で「洗い清める」こと
エンバーミングは、外国から伝わった技術で「衛生的」な防腐処理を施すものでドライアイスが不要
お湯で体を洗い清める湯灌(ゆかん)という儀式
病院で人がなくなった場合、ほとんどの病院では遺体をアルコールで拭き清め、さらに状況にあわせて鼻や口(などの穴)に脱脂綿を詰めたり髪を整えてくれます。
このほかに、故人の遺体をお湯で洗い清める・・・といった儀式もあり、葬儀業界ではこの儀式のことを『湯灌』と呼んでいます。
「ゆ」の次の漢字の読みが難しく、「わからない!!」という方がほとんどかもしれませんが、『湯灌』と書いて『ゆかん』と呼称します。
奈良時代に成立した歴史書「日本書紀」には、
「天皇(すめらみこと)、乃ち沐浴(ゆかはあみ)齋戒(ものいみ)して、殿(みあらか)の内を潔淨(きよまは)りて」
「沐浴齊戒して、各(おのおの)盟神探湯(くかたち)せよ」
上記のような表現があり、そのなかの「沐浴」は身を忌(当時の文献では、「斎(い)」)み清めることから「斎川浴み(ユカワアミ)」とも呼ばれており、そこから転じて「ゆかん(湯灌)」になったと言われています。
ですので、西暦700年代から、この湯灌と呼ばれる”お清めの”儀式は存在していたのですね。
この、故人を洗い清めるための儀式は、現代では「湯灌師」と呼ばれる専門業者がその役割を担っています。
しかしながら、現在では葬儀業者や湯灌専門の業者がおり、その役割を担っています。
最近では、湯船など設備が整った車で依頼場所へ向かい湯灌を行うという形が多いようです。
湯灌で提供されるサービスは、業者によって異なりますが、
- 体をお湯で洗い清める
- 洗髪
- 髭そり
- お化粧(主に女性)
- 着物や衣類への着替え
- 布団に横たわらせる
上記のようなものがあります。
故人の中には、病気でしばらくお風呂に入れなかった……という場合もあり、遺族としては、『納棺前に湯灌で綺麗にして送ってあげることができてよかった』という声も多く聞かれます。
湯灌には本来「生前の痛み、悩み、苦しみを洗い流す」=「早く成仏してすっきりとした魂で来世へ旅立っていってほしい」という宗教的な意味があり、そこには亡くなったあとも故人を思いやる家族の気持ちがこめられています。
しかしながら、現在では葬儀業者や湯灌専門の業者がおり、その役割を担っています。
代表取締役社長 高野 幸延
弊社で湯灌の儀式をご希望される方は、葬儀施工件数の約6〜7割です。
ご希望される大半の理由は見違えるほど綺麗になる点と、闘病など長らくお風呂などに入れなったなどの理由が多いでしょうか。
逆にお風呂があまり好きではなかった、または故人の裸を人目にさらけ出したくない、触られたくないといった理由でご希望されないこともあります。
湯灌とは異なるエンバーミングという技術
上記の湯灌という儀式と似たものに、エンバーミング(遺体防腐処理)という外国から伝わった技術があります。これも、湯灌と同じく納棺の前に行います。
エンバーミングは、主に、
- 腐敗防止
- 殺菌・消毒
- 修復
上記3つの目的をもった「遺体防腐処理」のための技術です。
よく、ドライアイスが不要・・・と言われたりするのは、この防腐処理に起因しています。
土葬の多い地域で感染症の蔓延を防ぐために殺菌消毒をしたり、また、宗教上の理由で遺体を保存する必要性があったり・・・エンバーミングの躍進の理由としては諸説ありますが、【故人の遺体を綺麗にする】という観点では湯灌となんらかわりはありません。
さて、このエンバーミングですが、湯灌との大きな違いは、遺体の血管にエンバーミング溶液を注入し、防腐処理を施す点にあります。
エンバーミング溶液は、遺体の「場所」ごとに注入する内容物が異なっています。
溶液の種類 | 内容物 | 説明 |
---|---|---|
注入前液 | 半凝固剤 | 動脈に凝固剤を入れて防腐処理を行う前に、体全体に行き渡りしやすくする溶液。 |
動脈液 | 凝固剤、色素 | 体全体を防腐するための溶液。 遺体の表情に赤みをいれることを目的に色素を配合する場合もあります。 |
体腔液(たいこうえき) | 凝固剤・皮膚浸透剤等 | 諸内臓がおさまっていた空間(体腔)に注入する溶液。 |
遺体の顔色がよくない場合には、動脈液に「色素」を混ぜ込むことで、赤みをおびさせる場合もあります。
その成果もあり、『生前の元気な姿のままのようだ』『いつものようにぐっすりと寝ているようだ』と、遺された家族も驚くほど、生前の姿に近づけることも可能です。
ただ、このエンバーミングですが、薬剤の注入や施術が必要となるため、設備の整った場所での処置が欠かせません。
そのため、自宅では行えず、遺体は専用の施設に移送されることになります。
費用については、葬儀業者にもよりますが、固定プランに含まれている・・・ということは稀なため、別途費用となっている場合がほとんどです(葬儀社自体が対応はせず、エンバーミング業者への仲介がほとんど)。
費用の比較
費用 | 備考 | |
---|---|---|
ドライアイス | 8,000円~/1日10kg | 2~3日程度の利用が平均的 |
エンバーミング | 250,000円/1体 ※遺体搬送費用は別途 |
有効日数約2週間 |
保管料(霊安室) | ~15,000円/1日 | ドライアイスを使用しないケースの参考 |
価格面でみると、ドライアイスとの差は歴然ではありますが、生前に限りなく近い姿にしたい場合や、昨今では火葬場の混雑により「待ち」が出てしまうこともあり、それらに対処するためにも、エンバーミングは有用であると考えられます。
なお、ドライアイスを使用しないケース(火葬式・直葬などの通夜や告別式を行わないもの)もあり、その場合の参考として「保管料(霊安室)」の費用情報も掲載しております。
豆知識:エンバーミングには資格が必要?
そのため、処置できる技術者の数も限られており、対応できる葬儀社の数も多くはありません。
最後に・・・
湯灌とエンバーミング・・・何をしてもらえるのかを下記にまとめてみました。
防腐処理 | 殺菌・消毒 | 化粧 | 修復 | |
---|---|---|---|---|
湯灌 | × | ○ ※お湯での洗浄 |
○ | × |
エンバーミング | ○ | ○ | ○ | ○ |
故人の体を綺麗にするという点では、湯灌もエンバーミングも変わりはありませんが、故人の体に人工的な手を加えてより生前の姿に近づけるのが「エンバーミング」。
人工的な処置などはなくお別れの儀式として故人の体を洗い清めるのが「湯灌」となります。
雅セレモニーでは本記事で紹介した“湯灌”をご提供しています。
ご遺族の方々と同じ「旅立つ故人様への思いやり」の気持ちを持って、清拭や湯灌の儀一式を執り行います。(プランには含まれていませんが、ご葬儀の内容に合わせて追加できるオプションメニューとなります。)
代表取締役社長 高野 幸延
「体を清める」といった行為は昔から存在しており、実際それを誰が行っていたかは定かではありません。
現代では専門業者による湯灌が主流になってきておりますが、自力で湯を張り体を洗い流す場合には、給排水などの問題からかなりの設備が必要となります。
そのため、湯灌については、過去約20〜30年の間に現代のような湯灌の儀式が主流となり、それに伴って湯灌業者も増えてきたのが現状と考えられます。