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コラム エピローグ <偉人たちの最期> presented by 雅倶楽部 2019年3月13日掲載

【悲報】軍医総監時代の「森鴎外」…判断ミスで陸軍兵25万人を病気に

『舞姫』『雁(がん)』など、作家として知られている「森鴎外」。実は、軍医の最高位である軍医総監(陸軍省医務局長)としての顔を持つエリートでもありました。順風満帆な人生に見える一方、我慢し続ける人生だったとも言われています。
本稿では、そんな鴎外の生涯…そして、最期の言葉について触れてみたいと思います。

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森鴎外
(小説家、軍医、1862年 - 1922年 享年60歳)
死因
結核性の諸病
最期の言葉「ばかばかしい」


「ばかばかしい」発言の真偽やいかに?

実際は「無言だった」という説もあれば、違う言葉をつぶやこうとしたのを雑誌に「付添の看護師に『ばかばかしい』と言った」と書かれ、それが有名になってしまって遺族は困ったという説もあります。

後者を主張するのは、鴎外の次女・小堀杏奴(こぼりあんぬ)で、鴎外は本当は「もうじき治る」といおうとしていた・・・・・・と彼女は主張しているのです。

しかし「ばかばかしい」と「もうじき治る」・・・・・・アクセントが全く違いますよね。

実際のところは、まったく言葉にすらならないウワゴトのようなつぶやきだったのかもしれません。

個人的には森鴎外にはぜひ「ばかばかしい」と呟いて死んでほしいという思いがありますね。

ところで、森鴎外は病床にあるにもかかわらず、羽織袴を身につけて死の床に横たわっていました。

「勲功を評価し、あなたに爵位をあたえる。つまり華族にしてさしあげる」という叙爵の使者が来るのを期待しての行為だったといいます。

鴎外はそこまでしているのに、使者などやってくる気配もない。

そういう時、呟くべき言葉といえば「ばかばかしい」以外にはないような気がしませんか?

成功の裏には数多(あまた)の失敗あり

明治という時代の成功者の一人が森鴎外です。

医師としては軍医の最高位である軍医総監(陸軍省医務局長)にまで上り詰める一方、作家としても『舞姫』『雁』など多くの名作を残しています。

当時の立身出世の代表例のような森鴎外ですが、実際のところはビミョーです。

医師としては「白米を食事に採用する」という判断ミスを犯したため、陸軍だけで約25万人もの脚気患者を発生させています。

作家としても、現在でも読まれている代表作は若い時代に集中し、晩年には新聞に連載していた、江戸時代の実在したマイナーな町医者を主人公にした時代小説『北条霞亭(ほうじょうかてい)』が、あまりに地味で、つまらないという読者の声で打ち切りになるなどの憂き目を見ています。

不幸な結婚生活と不治の病

森鴎外の死因は、肺結核と腎臓の病気でした。

家の都合で結婚させられ、後に離婚している赤松登志子も結核で死んでいるので、おそらくは彼女から伝染(うつ)された病でしょう。

赤松登志子との結婚生活は不幸でした。

鴎外にとっては、彼がドイツでつきあっていた恋人女性が日本まで彼を追いかけてきてくれたのに、彼女を追い返してまでした「家のため」「自分の立身出世のため」の結婚だったのですが・・・・・・。

世間的にはいくら出世した状態で亡くなったとしても、鴎外本人は理性派です。

勝ち気な人物でしたが、医師として作家として、自分の評価くらい自分で一番よく出来たはずでしょう。

だからこその「ばかばかしい」という最後の言葉は「何を我慢しつづけたのだろうか」というような、自分の人生へのいつわりのない本音だったような気がしてなりません。

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