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コラム 葬儀業界分析 2019年2月23日掲載

5人に1人が加入する互助会ってなんだ?<冠婚葬祭互助会のイマ(1)>

冠婚葬祭「互助会」という存在…皆さんご存知でしょうか?
日本人口の1/5にあたる約20%(2,400万人)が加入する冠婚葬祭システムです。本稿では、互助会の仕組みに触れつつ供託金制度、驚愕の供託額、そして「なぜ互助会の加入者がこれほどにも多いのか」に迫ってみたいと思います。

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みなさんこんにちは。

雅セレモニーの分析記事担当&副編集長の有馬です。

前回、オンライン上の葬儀広告の「表示価格」と「実際の価格(一般的な葬儀をした場合)」の調査・分析記事を掲載したのですが、ニュースアプリSmartnewsでのスマッシュヒットを皮切りに、日々閲覧数が漸増しており嬉しい限りです。

ところで、情報収集の一環として「Googleニュース」のアラート機能を使っているのですが、その流れでニュース記事をザッピングしていたところ、こんな記事を見つけました。


消えた終活資金追う 会費で葬儀保証組合破産 会員2000人「詐欺では」あなたの特命取材班

「これって詐欺じゃないですか」

昨年12月中旬、憤るファクスが西日本新聞社に届いた。送り主は福岡県中間市の男性(77)。詳しく聞いてみると、18年前に加入して以来、毎年会費を払ってきた福岡市の葬儀保証組合が突然、破産手続きを開始したのだという。

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/383803/ 出典:西日本新聞社 / 2018年01月01日

2018年の年初に西日本新聞に掲載された特命取材記事で、端的に言うと…
「福岡県ゴールド事業協同組合」という組合が「就寝葬祭保証」という商品を会員に販売。費用は、年会費1万1千円で掛け捨て方式だったものの、突然破産手続きをしてしまいサービス提供を受けられなくなってしまった…というもの。

ご高齢者の方々にとって、先々の終活を見据えて準備していたものが無くなってしまう…使えなくなってしまうのはなかなか辛いものがあります。

それで、このニュースを見て思い出したのが葬儀業界特有の「互助会」という存在。

もちろん、先述の「福岡県ゴールド事業協同組合」は組合であって互助会では無いのですが、【前払による事前予約的なサービス(商品)】という括りとして考えると非常に近しい存在と言えます。

というわけで、今回は私自身の知識強化とあわせて、「互助会」について調査・分析できればと思います。

そもそも「互助会」とはなんなのか?

互助会とは葬儀会社のセレマ(CEREMA)が日本ではじめて考案した冠婚葬祭システムで、会員となるユーザーが費用を低額で事前に積立することで、

葬儀社側
互助会会員側
スケールメリットにより安価なサービスを提供できる
高価な冠婚葬祭費用負担を軽くできる(一括負担&価格負担)

双方メリットが得られる…と言われているサービスです。

『互助会?聞いたことないなぁ…』なんて方も多いかもしれませんが、まずは互助会各社が運営している葬儀ホール名をご覧ください。

互助会系葬祭会場名
企業名 斎場名 本拠地
ベルコ ベルコ 全国
日本セレモニー
(愛グループ)
典礼会館 全国
CEREMA(セレマ) シティホール 全国
アルファクラブ武蔵野 さがみ典礼 関東
117グループ
(大和生研)
大和会館/セレモ平安/117プラザ 兵庫県・和歌山県
レクスト
(旧「愛知冠婚葬祭互助会」)
愛昇殿 東海地方
平安レイサービス 湘和会堂 神奈川県
サン・ライフ
ホールディング
ファミリーホール 神奈川県、東京都下

結構な数の方が『あ、聞いたことあるわ』状態なのではないでしょうか。

かくいう私も、「さがみ典礼」での会葬に参列した経験があります。

会員が前払(=積立)した費用はどこにいく?

ところで、互助会を運営している企業のウェブサイトを拝見すると、「当互助会は、経済産業省のもと、厳しい審査をパスし…云々」的な文言をよくみかけます。

この文言をだけを見ると、『なんかすごそう…国も関与しているのかしら?!』なんて思ってしまいがちなのですが、確かに経済産業省から許認可は得ているものの

  • 割賦販売法(の「前払式特定取引」)に基づく対応を必要とする指定業者

というだけだったりします。

では、その『必要な対応』というのはなにか?というと…【前払金の50%の供託の義務】なんですね。

互助会の会員から支払(=積立)を受けた費用のうち50%は互助会の運営会社では保全せず、定められた「供託受託会社」などに預けておく…というのが必要な対応、というわけです。

ですので、積立金の50%は確実に保全されるわけですが、逆に言えば、契約している互助会運営企業になにかあれば、残りの50%は戻ってくるかはわからない・・・とも言うことができます。

供託受託会社はどんな企業がある?

供託受託会社…もう少し詳しく言うと「(互助会の)前受業務保証金の供託を受託契約する会社」なのですが、

  • 互助会保証株式会社
  • 日本割賦保証株式会社

上記のように、保証系専門の会社のほか、

  • 三菱UFJ銀行
  • 三井住友銀行
  • みずほ銀行

みなさんもご存知の大手銀行などが該当します(一部抜粋)。

なお、「日本割賦保証株式会社」は、百貨店(デパート)が友の会などで受ける積立を供託するのによく利用されている会社です。

あとは、上記以外には法務局に供託するパターンもあるようです。

ただ、まぁ…なんというか…「互助会保証協株式会社」の株主を調べてみると


互助会保証株式会社の株主(公開情報から抜粋)

ベルコ
セレマ
日本セレモニー
レクスト
三井住友銀行
みずほ銀行
三菱UFJ銀行
りそな銀行
三井住友信託
三菱UFJ信託

上位株主は互助会系の会社だったりします。

互助会とこれら供託受託会社の関係を調べる過程で「全日本冠婚葬祭互助協会」…といったような外部団体系の情報がやまほど出てきて(関係性がよくわからなくて)非常に困ったのですが、これらは供託受託会社ではなく、互助会系の企業群が設立した「外部団体」です。

葬祭ディレクター検定など「葬儀業界の質の向上を目的」にしたサービス提供や、啓蒙活動を担っている団体です。

互助会・供託受託会社・外部団体の相関図

出典:2018年12月29日の公開情報をもとに当社独自作成

というわけで、ここまでの組織間の関係性など図にしてみるとこんな感じになります。

もやもやが少しだけスッキリしますね。

で、いくら供託されてるの?

さて、ここまでくると気になるのが「供託金」の金額。

互助会大手のうち、非上場系6社と上場系2社の情報を調べてみました。

互助会系葬祭会社の前受金と供託金の額 (非上場企業)
前受金
の額
保全措置
供託金額 有価証券
供託
振替国債
の供託
前受業務
保証金
供託委託
供託金
合計
ベルコ 2,780億円
(2018年3月31日)
645億円 0円 142.5億円 664億円 1451.7億円
日本
セレモニー
1,325億円
(2018年1月31日)
ウェブ上に詳細非開示 662.5億円
※2
CEREMA
(セレマ)
1,090億円
(H30年7月期)
ウェブ上に詳細非開示 545億円
※2
アルファ
クラブ
武蔵野
520億円
(2018年4月30日)
ウェブ上に詳細非開示 260億円
※2
117グループ
(大和生研等)
510億円
(2018年6月30日)
ウェブ上に詳細非開示 255億円
レクスト 488億円
※3
(2018年6月30日)
ウェブ上に詳細非開示 244億円
※2
互助会系葬祭会社の前受金と供託金の額 (上場企業)
前受金
の額
保全措置
供託金額 敷金及び
保証金
土地 建物及び
構築物
供託金等
前払金
保全合計
平安
レイサービス
132億円
(2018年3月期)
68.54億円 10.66億円 5.25億円 1.85億円 86.31億円
サン・ライフ
ホールディング
269.6億円 開示資料中に詳細記載が無いため不明
出典:【公式】株式会社ベルコ/『IR情報>前受金保全情報
出典:日本セレモニー(愛グループ)/『会社概要
出典:セレマ/ 『会社案内
出典:117グループ(大和生研など) / 『会社案内>業績
出典:アルファクラブ武蔵野株式会社『ディスクロージャー
出典:株式会社レクスト / 『IR情報 > 財産及び収支に関する報告書
出典:平安レイサービス株式会社/IR情報『2018年3月期決算資料②
出典:サン・ライフホールディング/IR資料室『有価証券報告書-第49期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
※2018年12月29日時点の開示データを参照
※2:情報が開示されていないものについては、便宜的に「前受金の額」の50%(1/2)にあたる金額を掲載
※3:「財産及び宗旨に関する報告書」の貸借対照表『流動負債』『固定負債』内の「施行前受金」の値を合算

なお、非上場企業では完全に詳細情報が公開されていたのはベルコだけで、それ以外の会社については「前受金(積立として受け取った金額)」の公開のみが殆どでした。

「供託金」は、【割賦販売法第18条の3】の定めに基づき前受金の額の50%を供託することが定められていることから、「供託金」の額を開示していない企業については前受金の額の50%を便宜的に記述しております。

それにしても、ベルコ1社で3,000億円近く互助会加盟ユーザーが前払いしているという事実に震えました(笑)。

冠婚葬祭企業というよりは、役務付きの定額積立保険を商品にしている金融業(保険会社)のようだなぁ、というのが率直な感想。

ちなみに、互助会加盟ユーザーの積立による「前受金」とは別に、「未施行数」も一部の企業では開示されていました。

「未施行数」というのは、積立はしているけど、まだ葬儀を含めた冠婚葬祭の実施には至っていない数です。

互助会系葬祭会社の前受金と未施工数(想定値含む)

前受金の額 未施行数
公開値 1口単価
(12万円想定/独自算出)
ベルコ 2780億円
(2018年3月31日時点)
不明 231万口
(2780億円÷12万円)
日本セレモニー 1,325億円
(2018年1月31日時点)
950,000口
(@139,473円)

CEREMA(セレマ) 1090億円
(H30年7月期)
984,112口
(@110,813円)

アルファクラブ
武蔵野
520億円
(2018年4月30日)
427,697口
(@121,653円)

大和生研
(117グループ)
510億円
(2018年6月30日)
不明 42.5万口
(510億円÷12万円)
レクスト 488億円
※3 (2018年6月30日)
不明 40.6万口
(488億円÷12万円)
平安レイサービス 132億円
(2018年3月期)
不明 11万口
(132億円÷12万円)
サン・ライフ
ホールディング
269.6億円 不明 22.4万口
(269.6億円÷12万円)
出典:【公式】株式会社ベルコ/『IR情報>前受金保全情報
出典:日本セレモニー(愛グループ)/『会社概要
出典:セレマ/ 『会社案内
出典:117グループ(大和生研など) / 『会社案内>業績
出典:アルファクラブ武蔵野株式会社『ディスクロージャー
出典:株式会社レクスト / 『IR情報 > 財産及び収支に関する報告書
出典:平安レイサービス株式会社/IR情報『2018年3月期決算資料②
出典:サン・ライフホールディング/IR資料室『有価証券報告書-第49期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
※2018年12月29日時点の開示データを参照

で、それら未施行件数を表にしたものが上記です。

「日本セレモニー」「セレマ」「アルファクラブ武蔵野」の3社は未施工数が公表されており、1口あたりの積立平均金額は11万円~14万円になっているようでした。

次話以降では各社プランなどの分析をする予定ですが、互助会系の各社プランの最も安いものがだいたい24万円なので、金額だけをみると、全積立回数のうち半分(12万円前後)くらいまで積立をしているユーザーが多いような印象です。

とはいえ、中央値がわからないのでなんとも言えませんが…。

なお、「ベルコ」「大和生研(117グループ)」「レクスト」に関しては、未施行件数は不明でしたので、1口単価を12万円と仮定して口数を独自算定してみました。

【算式】
前受金の額÷12万円

「ベルコ」は231万口。「大和生研(117グループ)」は42.5万口。「レクスト」は40.6万口…という結果に。

「死後の不安」が互助会の加入へと駆り立てる?

先述の互助会上位6社で、加入口数は約550万口(想定値含む)でした。そして、一説には互助会の加入総口数は2,400万口にも登るのだとか。

日本の人口は、総務省統計局によると2018年12月1日時点で1.264億人。

…と考えると約19%が何らかの冠婚葬祭系の互助会に加入している計算になります。

1人で2口以上の加入をしている可能性もありますが、単純計算で5人に1人は互助会に加入していると言えます。

そこまで互助会が利用されている理由はなんなのでしょうか。

あくまでも推測の域を出ませんが、

  • あとに残る親族や家族に迷惑をかけたくない

という「死後の不安」が最も大きい理由なのではないかと考えています。

終活をする理由<上位5位>

対象:現在終活をしている、もしくは、今後終活をしたい人 n=1,053(複数回答)
出典:『デジタル終活知っている?希望するお墓のカタチは?20~70代にきく終活に関する意識調査』/ ホノテ

それを裏付けるように、インターネットマーケティングリサーチ会社の「マクロミル」が運営する市場調査メディア【ホノテ】によると、終活をしてる、もしくは今後終活をしたい人の約90%が「家族に迷惑をかけたくないから」という理由を挙げているのだとか。

というわけで、今回はここまで!

次回の記事では、互助会各社同士の葬儀プラン比較と、さらに互助会以外の葬儀会社のプランを比較して、「そもそも安いのか?(前払いする意義はあるのか?)」という点に切り込んでいく予定です。

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