神になろうとして火山にダイブした「エンペドクレス」
エンペドクレス (紀元前490年頃 – 紀元前430年頃) |
自然哲学者、医者、詩人、政治家 |
様々に伝えられるエンペドクレスの死因の中で、もっとも有名なのが「エトナ火山の中に神になろうとして飛び込んだ」というものです。
医師として死者を蘇らせたりすらできたエンペドクレスに対する住民の尊敬は高まる一方で、エンペドクレスも自分を神なのではないかと思ってしまったようですね。
80名ほどが見ている前で、エトナ火山の火口に飛び込んで、死んでしまいました。
この華麗なる死に様は、ニーチェや芥川龍之介といった、わりと頭でっかちなタイプ・・・・・・もっというと中二病っぽい作家の感受性にビシバシと訴えたようです。
空から降ってきた亀に当たって死亡した「アイソキュロス」
アイソキュロス (紀元前525年 - 紀元前456年) |
悲劇作家 |
アイソキュロスは古代ギリシャの中心国家・アテネを代表する悲劇作家です。
しかし、その死に様はといえば、外を歩いていると、空から亀が降ってきて、彼のハゲ頭に直撃!!
「犯人」はヒゲワシだといわれます。
ヒゲワシには捕まえた亀をぶつけて甲羅をカチ割り、その肉を食べる習性があるとか。
アイソキュロスのハゲ頭が岩だと間違えられてしまったのでしょうか。それこそ悲劇のような・・・・・・。
このエピソードは「アイスキュロスの亀」として、後に「ありえないことが起こる」という意味のことわざにすらなってしまっているのでした。
口げんかが強すぎて処刑された「ソクラテス」
ソクラテス (紀元前469年頃 - 紀元前399年頃) |
哲学者・彫刻家 |
ソクラテスの本業は哲学者ではありません。
彼の家業は職業彫刻家なのですが、まともに彫刻の仕事はせず、街の広場で論戦を誰ともなしにふっかけ、それに勝ち続ける奇妙な楽しみに没頭していました。
ソクラテスの言葉として「無知の知」というものがあります。
まぁ、正確にはソクラテスは哲学者ということになっていますが、生前は一冊の本も書いていません。
すべてソクラテスの弟子の一人だったプラトンが書き記しているわけですが・・・・・・ソクラテスは、とにかく公衆の面前で、誰かと論戦し、その相手を徹底的に言い負かすことで知られました。
そうしたほうが自分は知っているようで、何も知らないことに気づき、それが「無知の知」につながるのだ、と考えていたらしいのです。
当然、風采の上がらないハゲたオッサンにみんなの見ている前で言い負かされることに怒りを覚える人もいます。
ソクラテスに反感を持った中には、上流層もいました。
そういうエラい人たちの訴えでソクラテスは逮捕され、処刑されることになったりしました。
しかし牢屋の中でソクラテスは「悪法もまた法なり」とつぶやき、持ち前の弁論術を駆使して助かろうとはしませんでした。
そして、静かに毒杯を飲んで死んでいったとされます。
ただ、同時代の史料からはこの「悪法もまた法なり」という名言をソクラテスが呟いた証拠はどこにも確認できず、基本的に本当は言われていない「ウソ名言」だったのではないかと思われるのですが・・・・・・。
ウソ話がうますぎて処刑された「イソップ」
イソップ (紀元前619年 - 紀元前564年) |
寓話作家 |
イソップは奴隷出身で、とても見た目が悪い男でした。
しかし奴隷時代からおしゃべりの才能が買われ、それゆえに開放されて自由民となりました。
自由民になった後は、ギリシャ各地をトークして回る旅芸人のような生活をしていたのです。
ところがデルフォイ(神殿の巫女の予言で有名)という街で「話が巧すぎる。こいつは国家を乱す」と危惧され、神殿から金杯を盗んだという冤罪をかけられ、崖から突き落とされて死亡しました。
その時、イソップはなんとか助けてもらおうとペラペラペラペラしゃべりつづけましたが、最期に話していたのはなぜか「処女を奪われた少女の話」・・・・・・。
処刑人は耳を課さず、イソップを崖から突き落としてしまったのです。
むしろ「沈黙は金」だったのかもしれません。
余談ですが、イソップ童話は、江戸時代の日本でも実はよく読まれていたというと驚かれるでしょうか。
幕末の吉田松陰はイソップの本を読み、とくに『アリとキリギリス』に危機感を覚えました。
夏には歌って遊んでいたキリギリス。
一方、アリは地味に働き、貯蓄していました。そんなアリたちは、冬になってこまったキリギリスをバッサリ見捨てるという話です。
吉田松陰と松下村塾の門下生は「こんなひどい話が喜んで読まれている欧米とは鬼のような国に違いない!」とガクガクブルブルしてしまったのでした。
歴史エッセイスト・作家 堀江 宏樹
馬車の事故で骨折したケガがもとで亡くなったともいわれる。
エトナ山火口への投身自殺説ひとつにしても、バリエーションはたくさんある。
エトナ山の噴火口に飛び込むとき、エンペドクレスはきちんとサンダルを揃えて脱いでから飛び込んだ。そういう逸話がある一方、サンダルを履いたまま飛び込んだ説もある。すると火山が片足分のサンダルだけ「吐き出した」らしい。サンダルは青銅製だったので燃えなかった模様。